夜中に何度もトイレに起きる・残尿感がある・尿の量が減った、疲労感や脱力感があるといった症状はありませんか。漢方では、これらは「腎」の働きが低下した「腎虚」による症状であると考えられています。
「腎虚」とは腎臓が悪いわけではなく、年齢と共に「腎」の働きが衰えることによって起こります。
「腎は水液をつかさどる」といわれ、水をつかさどる腎と膀胱は深い関係にあります。また、全身の骨格、骨や歯、脳、目、耳、生殖能力、髪も「腎」の影響を受けるため、「腎」が衰えるとそれらの機能も低下してしまいます。
「腎虚」の状態になると、排尿・排泄異常だけではなく、腰痛や骨の異常、物忘れ、耳鳴り、聴力低下、かすみ目、白髪・脱毛や手足の冷え、むくみ、足のしびれなどの症状があらわれるといわれます。
「腎虚」は高齢の方だけの症状ではありません。若い方でも過労などにより無茶をすることで起こりえます。
「腎」を元気にし改善を図るのが八味地黄丸(はちみじおうがん)です。
八味地黄丸はその名の通り「地黄」という滋養強壮や血行改善作用などがある生薬をブレンドしてつくられています。頭からつま先まで、老化に伴う症状に広く使用されます。「中高年のアンチエイジング」の救世主といわれ、胃腸が丈夫であれば中高年には有効な漢方薬です。
■あの戦国武将も使っていた!?
八味地黄丸はあの徳川家康も愛用していたようで、自身で八味地黄丸を調合し、病気の家臣にも与えていたそうです。また、16人の子供を設け、亡くなる前年まで体を動かし、平均寿命が40歳程度だった時代に75歳まで長生きした理由の一つが八味地黄丸ともいわれています。
■男性の更年期障害に
女性だけではなく、更年期障害は男性にもあらわれます。男性のからだは8年周期で変化していき、56歳前後が男性更年期といわれます。男性更年期障害は男性ホルモン(テストステロン)の低下が原因と考えられ、男性ホルモンの低下による更年期障害の場合は八味地黄丸などの補腎薬が用いられます。
八味地黄丸は、手足の冷えがある場合や疲労感、頻尿・生殖器・腎の機能低下などに向いています。
「うつ」状態を伴う心因的な場合は半夏厚朴湯、疲れやすく食欲不振の場合は補中益気湯を。
■前立腺肥大症に
八味地黄丸の効能は排尿異常に関するもののため、前立腺肥大症に伴う尿量減少や頻尿、排尿異常の改善という目的で使用することもあります。
■中高年の女性に多い尿失禁
意思に反して漏れる、尿意がないのに漏れてしまう、という悩みにも八味地黄丸は向いています。年齢と共に骨盤内の筋力が低下すると、くしゃみやせきなどで腹部に力が入ったときに自分の意志と関係なく尿が漏れてしまうことがあります。これは、加齢と共に骨盤底筋や尿道括約筋が弱くなるためで、一種の生理的変化によるものです。意識的に肛門を閉じるなどの体操で改善されることもあります。
また、尿意がないのに漏れてしまう場合は、腎機能の低下や冷え、体力の衰えなどが関連すると考えられます。軽い尿漏れの時は体調・体質改善の処方として八味地黄丸が使われることがあります。八味地黄丸は男性だけではなく、症状が合えば女性ものんでいただけます。
■八味地黄丸■
体力中等度以下で、疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少または、多尿で時に口渇があるものの次の諸症:
下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、排尿困難、残尿感、夜間尿、頻尿、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)、軽い尿漏れ
八味地黄丸は体力が低下している「虚証」向けの漢方薬ですので、体力が充実し、暑がりでのぼせがある人には不向きです。「地黄」という生薬は胃にひびくため、胃腸が弱い方は気を付けてください。
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